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継続的な成果につながるアンバサダー型SNS運用の裏側【観光協会264万再生はどう生まれたか】

能登半島広域観光協会公式アンバサダー

能登半島広域観光協会公式アンバサダー
  • 地域のSNSアカウントを伸ばしたいけれど、外注先に丸投げでは現地のリアルが伝わらない。
  • 公募でアンバサダーを募ったものの、活動が名ばかりで一過性で終わってしまった。
  • 熱意のある発信者は地域にいるのに、その人たちの力をどう生かしていいかわからない、ましてや組織として束ねきれない。

地域のプロモーションに関わる方なら、周りでよく目にする課題ではないでしょうか。

能登半島広域観光協会さまの公式Instagramアカウントも、立ち上げ当初は同じ状況からのスタートでした。
特に能登半島地震と奥能登豪雨という2つの大災害から復興に向けて歩む能登で、大打撃を受けた観光の復活には情報発信が大きな課題でした。しかし、事務局職員は数人のみでSNSまで全く手が回らない。それなら地域の熱意ある人の力を集めて何か取り組みを一緒にできないか。そんな考えを体現するためにスキヤキッドが運用支援に入ったのが2025年の夏でした。

公式アンバサダーの公募を企画~採用まで一気通貫で行い、採用に至った地元にゆかりのある4名と組み、月1回の企画会議と現地撮影、徹底した添削を半年ほど積み重ねました。その結果、アカウントは5か月間でフォロワーが+5,848人と大きく成長し、各投稿の平均閲覧数は7万回を超え、1本のリール動画は264万再生を記録するなど、異例のスピードで進化を遂げました。本記事公開時点となる2026年6月29日時点では、フォロワー数が1.4万人を超え、9カ月間で1.2万人増加したことになります。紹介した宿泊施設や飲食店の予約が埋まるようになり、新規オープン店からは「能登のアカウントだから唯一取材を受けた」と言われるまでになりました。

なぜ他の地域でうまくいかなかったことが、能登ではうまくいったのか。4人のアンバサダーは、何を学び、何を変え、なぜ今も続けているのか。いいちさん、こりんさん、ちいさん、まるさんの4名にお話を伺いました。

能登半島広域観光協会さまへのインタビュー記事はこちら>

公式アンバサダー4名のご紹介(五十音順)

能登半島広域観光協会公式アンバサダー

いいちさん
子連れ向けスポット紹介を中心に金沢以北のおでかけ情報を個人で発信。能登の子連れ向け情報の発信は数少なく、貴重な存在に。アンバサダー採用時のフォロワー数は701人、現在は約1,500人。
https://www.instagram.com/iichi_mamatosodachi/

こりんさん
自身が能登で被災したことをきっかけに地元を応援したいと個人で発信を始め、現在は金沢を拠点に能登の魅力を届ける。地元の事業者さんを応援する投稿が中心。アンバサダー採用時のフォロワー数は268人、現在は5,000人を突破。
https://www.instagram.com/korin.noto.spot/

ちいさん
能登の復興への熱い想いから、4名の中で最も遠方から月に何度も能登へ通い撮影を重ねる。さらにアンバサダーとしての取材で出会った地元の事業者さんのもとで働くことが最近決まり、能登への移住を決断。アンバサダー採用時のフォロワー数は218人、現在は約2,200人。
https://www.instagram.com/ishikawa_michinoeki_chii/

まるさん
能登出身。石川県を中心に、大人がホッと癒される場所や、休日に行きたくなるグルメ・スポットを個人で発信中。実家のある能登には毎月通いながら、宿泊施設や飲食店などを丁寧に取り上げている。アンバサダー採用時のフォロワー数は8306人、現在はまもなく1万人突破を迎える。
https://www.instagram.com/maru_ishikawanomiryoku/

株式会社スキヤキッドについて

観光業界特化型のSNSマーケティングサービス「Tripro(トリプロ)」を運営。ホテル・旅館、商業施設、レジャー施設などの民間事業者から観光協会、官公庁まで、観光・おでかけ分野のSNS支援を専門としている。

アンバサダーの起用と運営の流れ

募集と選定
募集はInstagram上の一般公募で実施し、応募者一人ひとりのアカウントを確認したうえで採用を判断。採用基準はフォロワー数ではなく、地域への思いと投稿クオリティの伸びしろ。

月1回の企画会議
能登半島広域観光協会、4名のアンバサダー、スキヤキッドチームが集まり、前月投稿の振り返りと翌月の投稿案を議論。アンバサダーが「ここを取材したい」と取材先候補を持ち寄り、スキヤキッドは伸ばし方の視点から候補の選定や撮影の工夫を提案。

取材から投稿まで
取材先との交渉、撮影、編集、投稿までは各アンバサダーが担当。観光協会が適宜サポートに入る。スキヤキッドは一連の活動に必要な動き方のアドバイスやツールの提供を行い、作成されたすべての投稿に個別の添削を実施。構成や使用する映像に関するアドバイス、テロップの修正、編集方法のアドバイスなどを「これで投稿が伸びる」と判断できるまで具体的にフィードバックしている。

リアル撮影講習会
半年の間に2回、スキヤキッドチームが東京から能登に赴いて開催。基本的な映像の撮り方、インパクトあるシーンの作り方、様々な角度から撮るコツなどを、実演形式で指導。

能登半島広域観光協会公式アンバサダー

4人で月8本、能登の魅力を発信する

──【スキヤキッド 河田】アンバサダーとして普段どんな活動をされているかおしえてください。

【いいちさん】アンバサダーとしては、能登半島広域観光協会の公式Instagramへ、4人で月8本、能登の情報を投稿しています。4人とも、もともと個人のInstagramでお出かけや観光の発信をしてきたメンバーです。取材先との交渉から、撮影、編集、投稿まで、基本的にそれぞれが自分で行っています。

【まるさん】4人それぞれ得意な切り口が違うんです。私は宿や飲食店が中心で、ほかにも地元の事業者さんの応援、道の駅や直売所の紹介、子ども連れのおでかけスポットの紹介と、得意分野が分かれていて。1つのアカウントで、それぞれの強みを活かしているので能登のいろんな楽しみ方が見えてくると思います。

https://www.instagram.com/noto_kanko/

アンバサダーを始めたきっかけ

──【スキヤキッド 河田】アンバサダーへの参加を決めた理由をおしえてください。

【こりんさん】私自身が能登半島地震で被災して、地元を応援したくて個人でInstagramで発信していました。輪島では朝市の火災で友人のお店が巻き込まれたり、本当に周りに大変な思いをした人が多くて。「全部取り上げていきたい」という思いで始めたんです。ただ、一人の力では限界があって、広く発信できるアンバサダーに参加を決めました。
当時の私はフォロワーが200人台だったんです。数字ではなく、投稿の内容からどこに伸びしろがあるかを見極めてもらえたんだと思います。そこを見抜く目は本当にすごいなと感じます。

【ちいさん】私は能登には住んでいないのですが、震災後の能登がどうなっているのかずっと気になっていて。アンバサダー募集を締切の直前にInstagramで見かけて、SNSのことも教えてもらえる環境ならぜひ、と思い応募しました。

【まるさん】きっかけは、周りで「石川ってどこに行けばいいかわからない」という声をよく聞いていたことです。「石川に来てほしい、いいところを見てほしい」という思いで発信を始めました。能登出身だったこともあって、アンバサダーの募集を見たときにぜひやりたいと参加を決めました。

【いいちさん】私は父が能登出身で、住んでいたところも能登のすぐ近くなので、子どものころから能登には親しんでいました。もともと自分のお店のPRでSNSを始めて、以前は動画編集の仕事も手伝っていたので、発信そのものは身近で。ぜひやってみたい、と参加を決めました。

印象に残っている、それぞれの一本

──【スキヤキッド 河田】活動を続けるなかで、印象に残っている代表作はありますか?

【ちいさん】私は264万再生を記録したティラノサウルスレースの投稿ですね。コメント欄には「能登が元気そうでよかった」「能登を応援したい」というメッセージがたくさん寄せられて。発信活動をしている実感がその投稿で一番感じ取れました。

【まるさん】私が一番見ていただけたのは、能登鉄道の終着駅近くの宿泊施設の投稿でした。冒頭で「能登鉄道の終着駅から徒歩4分」というテロップを、電車の映像と一緒に入れたんです。能登への鉄道旅で最後まで行ける場所、しかも駅から徒歩4分という新発見につながったのか、車のない方にもしっかり届きました。商店街の被害がひどい地域で、知り合いから「泊まる場所ができて本当によかった」と直接連絡をいただけたのも、すごく嬉しかったです。

【こりんさん】私はアフタヌーンティーカフェを取り上げた投稿ですね。この投稿をきっかけに認知が広まり予約が埋まるようになりました。それ以降、季節限定商品が出るたびに「撮影してもらえませんか」と依頼をいただくようになりました。アンバサダーをやっていなかったら、こういった関係性はつくれなかったと思います。

【いいちさん】私は一番最初に作った「ケロンの村」という投稿です。夫と娘を連れて、何百枚も撮影しました。自分のアカウントではないですし、簡単に撮り直しに行ける場所でもないので、「撮り残してはいけない」という気合いで。この一本を経て、行く前に構成を考えてから撮影できるようになりました。

アンバサダー同士で支え合うチームへ

──【スキヤキッド 河田】アンバサダー同士のやりとりはありますか?そういえば最初のキックオフ会のとき、みなさん一緒に会場にいらっしゃいましたよね。まだオンラインでしか顔を合わせていないはずなのになぜもう仲良くなってる!?と驚きました。

【いいちさん】こりんさんがみんなに声をかけて、つないでくれたんです。だからキックオフ会のときには、もう仲良くなっていて(笑)
一人で投稿を作っていると、つい主観が入りすぎたり、自分の課題がぼやけてしまったりします。それに、自分の投稿だけ伸びないと「うまくできていないのは私だけかな」と落ち込むこともあって。でも4人で話すと、実はみんな同じように悩んでいるんですよね。「いやいや、そんなことないよ」「どんどん上手くなってるね」と言い合えるので、安心して、少しずつ一緒にうまくなっていける。ここのチームに入らせてもらったことが一番の財産だなと思っています。

【こりんさん】本当に良いメンバーが集まっていて、「このメンバーになってよかったよね」って話してます。撮影も一緒に行ってお互いサポートすることもありますね。能登は広くて、だいたい車で2〜3時間、最北端だと3時間以上かかるときもあるんです。そんなときに一緒に誰かがいると楽しい時間に変わります。モチベーションが少し下がったときも、誰かがぐっと引き上げてくれる。このメンバーじゃなかったら長続きしなかったかもしれません。

【ちいさん】みなさんから「一緒に行かない?」と声をかけてもらえるのが、すごく嬉しくて。始めたころはわからないことだらけだったので、一緒に行って相手の撮り方や進め方を間近で見られるのは勉強になるだけでなく、すごく心強いです。

【まるさん】2人で行くと、たとえばケーキを2種類、飲み物も2種類頼めて、画面が一気に華やかになります。表現の幅も広がるんです。それに撮影で大変だったことを言い合えるので、一人で抱え込まずにすむのもありがたいですね。

能登半島広域観光協会公式アンバサダー
アンバサダーのみなさんで撮影会

実践形式の撮影講習で、投稿が劇的に変わった

──【スキヤキッド 河田】一番最初に行った、撮影講習会はいかがでしたか?

【いいちさん】講習会そのものも、想像以上に本格的でした。キックオフ会でみんなで顔合わせをして理論を学んで、そのあと2回、撮影と編集の実践講習があって。1回3〜4時間と、しっかり時間をかけてくださるんです。 間近で撮り方を見て、横で真似しながら撮るので、文章やオンラインで教わるよりも、ぐっと理解が早くなると感じました。「引きの映像をしっかり撮ると空気感が伝わる」というのも、最初はピンとこなかったんですが、実際にやってみて腑に落ちました。あの講習会のあと、自分の投稿は劇的に変わったと思います。

【こりんさん】私はSNSスクールにも通っているんですが、そちらは座学が中心で、「こう撮るといい」と教わっても、実際に手を動かして学ぶ機会はないんです。スキヤキッドさんは東京からわざわざ来て、実際に一緒に動画を作りながら教えてくださいました。 すごく印象的だったのは、「自分が目で見ているものと、画面に映るものは違う」ということ。スマホの画面に映ったときの見え方を意識して、フレームの中をどれだけ魅力的に作れるかが大事です。その意味がだんだんわかるようになりました。

【ちいさん】初歩から細かく教えていただきました。グリッド線で水平に取るとか、初歩的ですがレンズを拭いてから撮るとか。一つひとつは小さなことなんですが、教わったことを忠実にやるようにしてから、投稿が変わっていくのを実感しました。

能登半島広域観光協会公式アンバサダー
撮影講習の様子

月1回の定例で、翌月の投稿を一緒に設計する

──【スキヤキッド 河田】月1回の企画会議では、どんなことをしていますか?

【まるさん】企画会議では、まず前の月の投稿を振り返って、何がよかったのか、なぜ伸び悩んだのかを教えてもらって、翌月の投稿案を一緒に考えます。

【いいちさん】私たちから取材先の候補を提案するのですが、スキヤキッドさんが一つ一つの候補地について「ここなら、こういう見せ方で撮るといいですよ」と構成や撮り方までその場でアドバイスをしてくれます。撮影に行く前にどう撮ればいいかのイメージができていて、現地で迷うことが少なくなりましたね。

【まるさん】全ての投稿にフィードバックいただけるんですが、とても具体的な内容が助かっています。たとえば宿泊施設で、ただお部屋を映すだけだとどこも似たような風景に見えてしまうんですが、カーテンを開ける動きをひとつ入れるだけで、自分がそこに泊まっているような没入感が出るとか。今まで自己流でやってきて正解か不安だったので、答え合わせができて「この撮り方でよかった」と自信を持って進められるようになりました。

能登半島広域観光協会公式アンバサダー
講習会の様子

「能登にいないのに、なんでわかるの?」スキヤキッドと組んで驚いたこと

──【スキヤキッド 河田】私たちと一緒に活動するなかで何か驚いたことはありますか?

【こりんさん】スキヤキッドさんは普段能登にいないのに、アドバイスがいつも的確で。「なんで現地にいないのに、そんなにわかるんだろう」って、4人でよく話していました(笑)。

【ちいさん】さっきお話ししたティラノサウルスレースの投稿も、もともとスキヤキッドさんから「こういうイベントがありますよ」と教えていただいたものでした。私は特別詳しいわけでもなくて、正直「自分にうまく撮れるかな」と自信もなかったんです。参考の動画も見せてもらって提案どおりに撮ってみたら、あんなに伸びて驚きました。

【まるさん】私たちは能登のことをよく知っていますが、スキヤキッドさんは客観的に県外からどう見えるかという目線で話してくださいます。「『ここはどこなのか』と場所をまず伝えないと、すぐにスクロールされてしまう」など、現地にいるとかえって気づかないことを的確に指摘してくださいます。

【こりんさん】あとは視点の細かさですね。最初に驚いたのは、テロップが少しずれているのを指摘されたときです。自分では気づけないほんの少しのずれまで見てくださっています。

アンバサダーがきっかけで能登に移住を決めた

──【スキヤキッド 河田】ちいさんは能登から遠いところに住まわれていたので、正直大変では、と心配していたんです。

【ちいさん】たしかに場所によっては移動に3時間近くかかって、ほぼ1日仕事になります。でもアンバサダー活動を始めてみたら、負担というより楽しむ感じでした。撮影のことも一から教えてもらえる環境だったので、遠くても学びながら能登に関われる良い機会になりました。

──【スキヤキッド 河田】能登に移住を決められたんですよね。

【ちいさん】はい、もうすぐ能登に移住します。アンバサダー活動がなかったら移住は絶対にしていなかったと思います。実は、アンバサダーとして取材させていただいたお店に就職するんです。そこでは能登食材を活かしたスイーツを作っていらっしゃって、シェフの能登への思いも強い方で。取材して、投稿を考えているうちに、だんだんお店への思いが強くなってきたんです。思い切ってシェフに「働かせてもらえないか」とご相談したら、最初びっくりされたようでしたが快く受け入れていただきました。

能登半島広域観光協会公式アンバサダー
アンバサダー同士で集まることもしばしば

これからの抱負と、能登への思い

──【スキヤキッド 河田】最後に、これからの抱負をおしえてください。

【ちいさん】「能登はやさしや土までも」という言葉が大好きになりました。これからも、もっとたくさんの方に能登の魅力を知ってもらえるように、発信を続けていきたいです。

【こりんさん】これからは、もっとわかりにくい場所、地元の方しか知らない場所も取材していきたいです。いつか能登の事業者さんに「こうやって発信するんだよ」とお伝えできるようになれたら、とも思っています。

【まるさん】能登のお店だけでなく、お店に関わる人の思いも一緒に届けられたらと思っています。「復興は進んでいるよ」と示せるような投稿を作っていきたいです。

【いいちさん】私は子連れでも安心して行ける能登をもっと発信していきたいですね。子どもたちが大きくなっても、能登に通い続けたいと思っています。

──【スキヤキッド 河田】同じような取り組みは多くの地域で試みられていますが、ほとんどは一過性で終わってしまいます。能登でうまくいったのは、アンバサダーのみなさんの能登への思いと、観光協会からのサポート、私たちの外からの支援、三者がうまく噛み合ったからなのではと考えています。

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